“かすてら饅頭”
◆◇菊水堂◆◇
住所 : 大牟田市大正町1丁目3番地2
電話 : 0944-56-1234 ◆訪問日:2012.11. 3
菊水堂の“かすてら饅頭”その2の話題は~
同じ炭鉱の街に生まれた“千鳥饅頭”を取り上げましょう(^-^)
その1の最後に少し触れたとおり、筑豊生まれの“千鳥饅頭”や“ひよこ饅頭”は、どちらも「鎌倉時代以来の蒸し饅頭とは異なる南蛮菓子の系譜に属する」焼き饅頭であるカステラ饅頭に分類できます。*注1,2
*注1 「 」内は、八百啓介『砂糖の通った道 ~菓子から見た社会史~』 弦書房 138頁より引用
*注2 以後、菊水堂の商品を“かすてら饅頭”、広く一般的な焼き饅頭としての呼び名を「カステラ饅頭」とします
ちなみに、“千鳥饅頭”の千鳥屋は1927(昭和2)年開業、“ひよこ饅頭”の吉野屋本舗は1912(大正元)年創業。*注3
菊水堂の“かすてら饅頭”は、その1で述べたように1885(明治18)年生まれで、カステラ饅頭の元祖と言えます。
*注3 千鳥屋を創業ではなく開業とした理由については、後の千鳥屋の歴史を参照して下さい。
さて、菊水堂5代目店主森史朗さんは、お祖父から次のような言葉を耳にされたとのこと~。
「大牟田にも博多のような商圏があったら大きな菓子屋も沢山できた・・・」
筑豊生まれのカステラ饅頭である“千鳥饅頭”や“ひよこ饅頭”は、今や全国的に有名な福岡のお菓子として人気を誇っています。“ひよこ饅頭”に至っては、東京にて“東京銘菓ひよこ”として販売されことから、東京のお菓子だと思っている方々も多いとか(?_?)
この様な全国展開を図るほど成長した背景には、千鳥屋や吉野堂にしろ斜陽化する筑豊の炭鉱を目の前にして、飯塚から近隣の博多(福岡)へ進出し大きく成長したという共通点があげられます。
今回話題にしている千鳥屋のルーツを辿ると、佐賀県久保田村(現佐賀市久保田町)にあった松月堂という菓子屋に行き着きます。
1899(明治32)年、松月堂の長男として生まれた千鳥屋初代社長の原田政雄氏は、大正時代に久保田村から抜け出して新たな店舗の開設を計画。当時の炭鉱景気にわく飯塚や大牟田、そして造船の佐世保に商業の博多をマーケティングリサーチした後、最終的に出店を決めたところが飯塚だったとか。そして、売り出した饅頭が“千鳥饅頭”であり、もとはといえば松月堂でつくっていたカステラ饅頭だったらしい。
政雄氏の後に、千鳥屋の経営を引き継いだつゆ夫人が語るには・・・
「政雄がまだ18歳の頃、仲間とともに新天地を求めて有田焼の行商に出たという。その際、飯塚に赴いたところ、小学校の教員であった姉の年収にも匹敵する儲けに驚き、その将来性を確信した」とのこと。*注4
*4 「 」内は、八百啓介『砂糖の通った道 ~菓子から見た社会史~』弦書房 141頁より引用
この遺伝子が引き継がれたのだろうか~
炭鉱の衰退を見て、いち早く博多(福岡)進出を決めた千鳥屋。この博多(福岡)進出が今の千鳥屋の発展につながっていくことになります。
以上の様なことをうらやんでか、菊水堂3代目店主は先の「大牟田にも博多のような・・・」という言葉を残された
そこで~、急速に閉山が進行した筑豊よりは、今しばらく炭鉱が存続したわが大牟田市・・・。
現在の大牟田市の人口は、最盛期の1955(昭和30)年頃の20万人から12万5千人と大きく減少。菊水堂の近くにあった松屋デパートが閉店してからすでに8年・・・。人通りの絶えた通りに、今ではひっそりと佇む菊水堂・・・。買い物帰りに、松屋デパートに来たついでにと菊水堂に寄っていた客も今はなく、売り上げは減少・・・。
そんな中、菊水堂5代目店主の森さんは「饅頭王国 大牟田」の旗印を掲げ、“かすてら饅頭”の伝統を守りながら新作饅頭の開発にも意欲的に取り組んでこられました。東京などでの展示会で、大牟田産の新作饅頭が日の目を見ることもありました。しかし、展示会で主力の“かすてら饅頭”に大量注文がきたとしたら、現実的には手作りの量産は難しいし、機械を導入した大がかりな生産も現状では望めない・・・。
最終的には、手の温もりのある手作り“かすてら饅頭”に価値を見いだし、この伝統を守っていくことが大切ではないかと思われているようです。
▲今では、こちらの蒸し饅頭である “大蛇山饅頭” が人気のようで~
博多(福岡)に進出し、今では全国区として名が知れ渡っている飯塚の“千鳥饅頭”。そして、焼き饅頭の元祖カステラ饅頭として、今も手作りの伝統と味を守り抜く菊水堂の“かすてら饅頭”。
寂しくなった大牟田の街角に、今も昔と変わらず店を構える菊水堂(*^_^*)
菊水堂の存在が、どことなく愛おしく感じられる・・・そんな今回のテーマでした。
▲古い “かすてら饅頭” の表札
次回(最終回)は、“かすてら饅頭”と北原白秋について、プチ旅に出かける予定です。また次回をお楽しみに
(つづく)