西村 健 『地の底のヤマ』 講談社
正月の読書はこれに決まり
▼帯のキャッチコピーより
呑んだ、
愛した、
闘った!
九州大牟田・三池炭鉱。
故郷を深く愛する
一人の警官の人生を軸に、
昭和三十五年から
現在に至る、
熱き男たちの
生き様を描ききる。
これを
読まずに
日本の戦後は
語れない―――
全編863ページにわたる超大作です。
しかも、2段組のページ設定です。
管理人は、ただいま342ページを読書中です。
主人公は、猿渡鉄男・・・大牟田市出身の警察官。
第一部の舞台は、昭和四十九(1974)年の大牟田・・・
争議に炭塵爆発事故を経てきたこの街・・・
そこに生きた人々の喜怒哀楽がさまざまに渦巻く中、ある事件が起こる。
その事件の真相は、ガタガタ橋にて語られる。
夜の大牟田の街には、松屋から“菩提樹”のメロディーが鳴り響く。
もうこれくらいにいたしましょう(^_-)
大牟田出身の作家、西村 健さんによる大牟田を舞台にした超大作。
大牟田と三池炭鉱の歴史を掘り下げ、そこに暮らした人々の息遣いを見事に描ききった内容で、非常に読み応えありです。
あとは、皆さま実際お手にとってお読み下さいませ~。
さて、一つだけ付け加えいたしましょう。
もちろん、それは鉄道関連でございます。出てきます、“炭鉱電車”も(^_^)v
で~、第一部を読んだところで気になる記述が一つだけありました。
それは、ガタガタ橋のシーン(?_?)
ガタガタ橋に沿って、坑木などの資材を土場(現諏訪公園)から三川坑に運ぶ細い線路がありました。小説では、この様に描かれています・・・
ピーッという音、続いてガタンガタン、という音が響いて来た。ディーゼル機関車だった。坑木を堆く積んだ貨車を、何台も連ねて曳いている。三川坑の坑外運搬軌道である。坑内外の作業に必要な資材を運搬するための軌道で、炭鉱電車の小型版のようなものだった。ここ大牟田ではこのように、炭鉱のための専用の鉄路が町のあちこちを走っている・・・・ 〈第一部 P193より引用〉
どこが気になるかって?
第一部の時代設定は、昭和49(1974)年です。明らかに間違っている箇所があります。それは「ディーゼル機関車」です。確かに、晩年のこの軌道を行き交っていたのはディーゼル機関車でしたが、昭和49年の頃はL型の電気機関車でした。この坑外軌道がディーゼル化されたのは、昭和59(1984)年頃のことです。
第一部のラストシーンにもこの「ディーゼル機関車」は登場してきます。そのラストシーンは・・・
ピーッという汽笛が耳を劈く。列車が轟音と共に目の前を走り抜ける。鉄男は後ろの手摺に背をもたれかけ、列車越しに夜の河口を眺め続けた。やがて走り抜けた列車が、彼方へと消え去って行く。ガタンガタンといつまでも尾を引く鉄路の余韻が、町の鼓動のように聞こえてきた。 〈第一部 P225より引用〉
(つづく)
◆当ブログ内関連ページ
①松屋のミュージックサイレン
②土場のL型電気機関車
③ガタガタ橋
◆西村 健さんについての情報はこちら
▲昨年暮れに、博多駅ビル丸善にてサイン本を購入