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▲Barry Docks   
〈出典〉1900年頃の絵葉書より : Barry dock gate を、貨物船が通過していきます

明治31年 團・牧田の海外視察 その3 「十一月十四日 Barry dock」

三池築港百話 第十話は、牧田環(まきた たまき)の残した日記や談話をもとに、三池築港前史を繙く・・・
その3回目 「十一月十四日 Barry dock」です。
今回の時計の針も、三池築港工事が始まる4年前の1898(明治31)年頃となります。

前回は、 団一行が Cardiffの Park Hotel喫煙室にて、三池築港について語り合う場面をお伝えしましたが、一行がCardiffに到着した翌日に訪れたのが今回取り上げる「Barry dock」です。

まずは、この日の日記全文を見てみましょう。
 
十一月十四日 晴 八時起 団松原及びデビー氏ト共ニ朝食ヲ終リ日記を認ム後三氏ト共ニ十一時ノ汽車ニテ Barry dock 巡回ニ赴ク 技師某氏ノ案内ニテ Loading Crane 及 dock gate 開閉ノ方法等ヲ巡視ス 午後二時半ノ汽車ニ帰宿昼食ス 日記ヲ認ム  喫烟室ニテ暫時会談ノ後夕食ヲ終リ 団松原氏ト共ニ市中ヲ散歩シ帰宿 十一時頃就褥ス
   志 片
   ニ ニ  汽車賃カーデフ バレードック間
 カーデフ 及バレードック間 八哩

Barry dockは、Cardiffの南西約13㎞に位置しています。
19世紀半ばには、South Walesの炭鉱よりCardiffの港へ石炭が集積されました。
しかし、19世紀も後半になるとCardiffでの船積能力を超えるまでに石炭需要が増大します。
そこで、Barry Railway が設立され1884年にBarry dock築造が始まり、1889年に完成を見たのでした。
いわば、Cardiffの港を補助するような役割を持ったBarry dockということになります。

一行が訪れたのは、dock完成後9年目の頃でした。

さて、先の絵葉書は dock gate を通過する貨物船の写真です。
写真の左側がdock側、右側が防波堤に守られた内港側と思われます。
現在のBarry dock空中写真を見てみると・・・
Barry Islandとの埋め立て地と対岸の岬を利用して、Barry dockが築造されたことが読み取れます。

このBarry dockにて、絵葉書中の dock gate やその奥に写し出されたいるクレーンにBarry Railway の炭車達と船積施設を巡ったであろう一行です。
Cardiffの Park Hotelの喫煙室では、この日視察したBarry dock のダブル・ゲートの様子が語られ、後の三池築港のシングル・ゲートについての考察が行われたりしたのでしょうか・・・。

最後に、いまものこるBarry Island Railway と、かつてのBarry Railway 社の社紋を紹介して、本日の旅は終わりといたしましょう。


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(つづく)

◆この記事を作成するにあたり、以下のHPを参考にした。
  http://www.barry-town-crier.org.uk/History/tabid/52/Default.aspx