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写真①】旧三川坑跡に保存されている“ガメ電”こと、15tB形5号電気機関車


  “ガメ電”は国内に現存する最古級の電気機関車 ~最古級の正体を探る~


〈はじめに〉
皆さんは、かつて三池炭鉱の専用鉄道で活躍していた電気機関車が4両保存されているのをご存じでしょうか?一昨年(2016年)の夏より、旧三川坑跡地に展示されていますが、その内の一両である通称“ガメ電”こと15tB形5号電気機関車は、4両の中で最も古い電気機関車です。【写真①】 
大牟田市が設置した“ガメ電”に関する説明文には「1908(明治41)年にアメリカのジェネラル・エレクトリック社で製造された、国内に現存する最古級の電気機関車として貴重な存在です。」と記されています。今回は、この説明文中の「最古級」にこだわって、“ガメ電”にまつわる歴史を探っていきたいと思います。そこで、「国内に現存する」の文言はさておき、日本国内で最古の電気機関車はいったい、どこで、いつ頃使用されたのでしょうか?そして“ガメ電”は、日本で何番目に古い電気機関車なのでしょうか・・・。
 



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写真②】足尾銅山の電気機関車 『古河足尾銅山写真帖』1895年発行より


〈日本最古の電気機関車〉
 早速ですが、日本における鉄道史上で最古とされる電気機関車は、足尾銅山で使用されたものとされています。1891(明治24)年、古川市兵衛経営の足尾銅山にて、坑外線の一部区間が電化され、日本初の電気機関車が走った記録が残されています。詳細については不明な点もあるのですが、足尾銅山でこの時使用された電気機関車が日本最古のものとみて間違いはなさそうです。【写真②】この電気機関車は、運転台に屋根を取り付けた独特の形状をしていますが、“ガメ電”を製造したアメリカのジェネラル・エレクトリック社の設計図をもとに、足尾銅山工作局で製造されたと伝わっています。この電気機関車のゲージ(軌間:線路の幅)は、610㎜という狭いもので、足尾銅山に続いて日本各地の鉱山(小坂、日立、別子など)やトンネル工事現場などで、同時期にこの様な狭いゲージの産業用小型電気機関車が使用されていきます。
 



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【 写真③】八幡製鉄所のE2電気機関車 『製鉄所写真帖』1914年発行より


〈“ガメ電”は何番目に古いのか?〉
 さて、“ガメ電”のゲージはというと1,067㎜で、JRの在来線のゲージと同じです。それでは、鉱山などの狭いゲージの軌道を除いて、このゲージにおける日本最古の電気機関車は、いつ、どこで走ったのでしょうか?その答えは、1903(明治36)年に、八幡製鉄所で使用されたものと思われます。【写真③】
この凸形の機関車は、ドイツのアルゲマイネ社が製造したもので、八幡製鉄所内でのコークス運搬用として使用され、計3両が輸入された記録が残っています。そして、これに次いで二番目に古い電気機関車が、われらが“ガメ電”でございます。


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【 写真④】三池港貯炭トンネル 大牟田駅前山田製絵葉書より



  ここで、“ガメ電”について、少し詳しく説明をしておきましょう。そもそも“ガメ電”は、三池港の開港に合わせてジェネラル・エレクトリック社から計10両が輸入され、石炭荷役、炭車の入換用として使用されました。具体的には、坑口から三池港の貯炭トンネルに送られた石炭を、ドックに面した船積機(通称:ダンクロ)に運ぶのです。【写真④】

実は、この“ガメ電”には、「最古級」に関係するもう一つの事実があります。それは、まさしく日本最古のもので、貯炭トンネルに設置されていた設備で、第三軌条方式と呼ばれる集電システムです。この方式は、1911(明治44)年に国有鉄道(当時は鉄道院)初の電化区間(信越本線:横川~軽井沢間、アプト式)に採用されたことで知られていますが、実はその3年前に三池港の貯炭トンネルに採用されていた事実はまったくと言っていいほど知られていません。この第三軌条方式とは、3つめのレールを敷設しそこから電力を得る方式で、現在も東京地下鉄の銀座線や丸ノ内線などはこの方式で運行されています。貯炭トンネルにて、架線ではなくこの方式が導入された理由は、トンネル内での作業の安全性を考慮してのことでした。ただし、記録によると危険防止にはさほどの効果はなく、また取り扱いが不便であったことから設置1年後には撤去されたらしい。残念ながら、保存されている“ガメ電”5号機には、その痕跡を見いだすことはできませんが、ぜひ知っておきたい“ガメ電”の日本最古なのです。





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写真⑤】足尾銅山観光銅資料館に保管されている電気機関車



〈国内に現存する最古の電気機関車は・・・〉

最後に、本題の「国内に現存する最古の電気機関車」について明らかにしましょう。実は、〈日本最古の電気機関車〉で述べた電気機関車で現存するものはありません。そして、八幡製鉄所で使用された電気機関車も現存しません。ということは・・・“ガメ電”は、現存する日本最古の電気機関車であると言いたいところですが、1つだけ気になる電気機関車が足尾銅山の資料館に保存されています。【写真⑤】この電気機関車は、ゲージ476㎜の坑内用電気機関車で、〈日本最古の電気機関車〉で述べたものより少し後(明治時代後期)に製造された可能性がありますが、正確な製造年が不明です。よって、“ガメ電”は、「ゲージ1,067㎜の電気機関車」という条件はつくものの、「国内に現存する最古の電気機関車」といっても過言ではないでしょう。



(おわり)